失うものがない人は強いのだが・・・
お金持ちになるためには、何らかのリスクを取る必要があるが、自分に守るものが多すぎるとなかなかリスクが取れなくなる。
反対に失うものがない人は、思い切ったリスクが取れるのでお金持ちになりやすい。
お金持ちになるための行動ができるかどうかは、メンタルな部分に大きく依存する。
自分には失うものはあまりないと考えられるようになると、お金持ちになるための行動が自然にできるようになる。
ところが困ったことに、お金持ちではない人の多くが、失うものがないどころか、失うものばかりなのである。フツーの人がなかなかお金持ちになれない理由はここにある。
破格の条件を示された営業マン
OA機器関係の販売会社に勤めるIさんは、営業チームのリーダーをしている。あるとき、取引先から営業チームごと引き抜く話が持ち込まれた。
条件はかなり破格であった。移籍にあたって1000万円の契約金がもらえ、現状の給料は最低限維持される。しかも現状の給料に上乗せして、販売代金の数%がコミッションとして支払われる。現在の売上げをキープすれば、年収は2000万円を軽く超える(現在は650万円)。
しかも引き抜きを打診した取引先のオーナー社長S氏は、現在在籍している会社とは長い付き合いである。両者は競合する部分もあるが基本的には重要顧客であり、S氏から話を通してもらえば、移籍をめぐってトラブルになる可能性は低い。
ただし、終身雇用ではなく売上げが伸びない状況が7年続いたら契約は解除されるというのが、唯一のマイナス面だった。だが逆に言えば10年は保証されるということだ。
年収650万円のIさんにとってはめったに、というか一生のうち一回あるかないかの大チャンスだ。今いる会社だって定年まで安泰である保証はない。
しかもIさんは、ずっと会社の給料や社風に強い不満を持っていた。自分はたくさん稼いでいるのになぜ650万しかもらえないのか?会社には無駄が多いのではないか?と考えていた。
なぜ決められないのか自分でも理由が分からない
これだけの状況がそろえば、即移籍を決めそうなものだが、いざ具体的な話が出るとIさんは迷ってしまった。先方の社長とは2~3回ほど会い、かなり具体的に話を詰めてきた。そろそろ結論を出してはどうか?という先方社長の打診で、Iさんは社長と食事をすることになった。
社長「そろそろ決めることができましたか?」
Iさん「自分にとってはすごくいいお話だと思っています」
社長 「何か条件面でまだ希望があるのですか?」
Iさん「まったくありません。破格の条件だと思います」
社長「では踏ん切りがつかないのはなぜ?」
Iさん「いや。こんないいお話はないと思っています・・」
このようなやり取りがしばらく続いたが、社長さんはおもむろにIさんに言った。
社長「Iさんにとっては今の会社にいることがもっとも大事なことのようですね」
Iさん「そんなことはありません。正直にいうとかなり不満を持っています」
社長「いや違いますよ。あたなにとっては今の会社は絶対に手放せない宝物です」
「この話はなかったことにしましょう。今後もいいお付き合いをしてください」
失うものについて自覚がないことは危険なこと
Iさんは今でも気づいていないが、自分が今いる会社が大切で大切でしょうがないのである。
Iさんには失うものがあまりにもありすぎるのだ。いい悪いは別として、Iさんはおそらく一生お金持ちになるチャンスをモノにすることはないだろう。
それはそれで本人の生き方なので他人がとやかく言うことではないのだが、このケースで一番問題なのは、Iさんがそれを自覚していないことである。
Iさんが失うものだらけであることを自覚していれば、次に似たような誘いがあってもきっぱりと断ることができる。
しかし、Iさんが自分の気持ちを自覚していないと、大変なことになる。今回の引き抜きの提案は客観的に見て破格の好条件であり、このようなチャンスはもう二度と来ないと考えるのだ妥当である。だが、次回にあまりよくない条件の提案が来た時に、Iさんはそれに乗ってしまう可能性があるのだ。
次にもっと条件の悪い案件がやってくると、人間の心理として、前の条件で決めておけばよかったと後悔してしまう。それが転じて、もうこのようなチャンスはないのではないか?という不安につながり、本来転職などしたくなかったはずなのに、本末転倒な行動を起こしてしまうのだ。
漠然とお金持ちになりたいと思っている人がいれば、もう一度よく考えた方がよい。自分には失うものがどれだけあり、お金持ちになるためならそれを失うことがあってもやむを得ないと思えるのかどうかについて。
【参考記事】
「本当は存在しない「わらしべ長者」」
【関連サイト】
「なぜあなたは出世できないのか?」
「投資で成功するために絶対知っておくべきこと」
「起業・独立で成功するために知っておくべきこと」
「放射能から身を守る食品サイト」
「記事にできないホンネを集めた脱力系裏ニュースサイト」
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