お金を持っている人は権力を持っていない
お金を持っている人は権力があると思われている。半分当たっているが、半分はハズレている。権力の定義にもよるが、日本ではお金を持っている人はあまり権力を持っていない。これは世界の中ではかなり特殊な部類に入る。
お金と権力の関係は重要なので、お金持ちを目指す人も、すでにお金持ちの人も、またお金が嫌いな人も知っておいて損はないだろう。
アメリカの場合はお金持ちはたいがい権力者だ
普通はお金を持っている人は権力を持っている。ただ、権力を実際に行使する人と、それを指示する人は別で、お金持ちの人は指示しているだけということが多い。
たとえばアメリカの会社の多くは、会社の所有者である株主の意向で経営方針が決定される。実際に会社を経営している人(社長や副社長など)は、株主の意向を受けて会社の実務を行う代理人だ。最終的な会社の方向性を決定しているのは投資家である。
アメリカには大富豪と呼ばれる人がたくさんおり、いろいろな会社に莫大な資金を投資している。このひとたちは間接的にアメリカの会社を支配しているということができる。
もっとも株主の意向だけで会社が動かせるわけではない。実際に会社を経営している経営者と株主は常に対立したり妥協しながら、お互いに落としどころを探っているという感じだ。また実績を上げた経営者なら年俸何十億円という金額で投資家から雇われるので、経営者もかなりのお金持ちである。
政治の世界も同様である。直接的な権力を持っているのは政治家なのだが、選挙には途方もないお金がかかる。政治家はお金持ちから援助を受けないと当選することができない。ここでもお金持ちは間接的に政治家を通じて影響力を行使することになる。
日本は権力者はあまりお金を持っていない
ところが日本の場合には状況が大きく異なる。
日本は制度面でいろいろな規制を作り、資産家が会社に投資できないようにしてきた。また莫大な資産を持つ資産家が生まれないように、経済活動に様々な規制をかけてきた。
このため日本の会社は、株式会社という形態になっていても、実質的に株主が権利を行使することが難しくなっている。株主からの圧力がないわけだから、ある意味で経営者はやりたい放題である。したがって日本では会社の経営者が社会で大きな影響力を持っているのである。
さらに日本の会社の場合、経営者は従業員の中から昇進する。したがって企業の経営者は従業員の利益代表者にもなっている。このため日本の会社の経営者はあまり高い給料をもらっていない。もちろんヒラ社員に比べれば高い給料かもしれないが、しょせんはただのサラリーマンである。
つまり、会社の社長になれば社会的な地位とある程度の権力は得られるが、お金持ちにはなれない仕組みになっているのである。
では会社の経営者は誰からも支配を受けないのか?そんなことはない。企業はさまざまな規制によって官庁の支配を受けている。
官庁を動かしているのは役人である。したがって日本でもっとも権力を持っているのは役人ということになる。
だが役人は公務員なので、給料はそれほど高くない(世界的に見ればかなり高い部類には入るが・・)。
本来、官庁は政治家が指導することになっているのだが、献金が厳しく規制されている日本の政治家には十分な活動資金がなく、官庁に頼らないと仕事ができない。このため表面的にはエラそうにしていても、実は官庁には逆うことはできない。
役人はもっとも権力を持っているのだが、給料は大企業経営者よりもむしろ安いか、年金などを含めたトータルで上回る程度だ。日本では権力を持つ人にはあまりお金がまわらないようになっている。
日本は世界でもっとも成功した社会主義国
結局のところ、日本では以下のようなヒエラルキーが構成されている。
役人(キャリア官僚)-大企業経営者-大企業社員-役人(ノンキャリ)-中小企業経営者-中小企業社員
このヒエラルキーの中に入れば、とりあえず一生安心して生活することができる(日本が安泰であればという条件付きではあるが)。だがその代わりに稼げるお金の額は厳しく制限される。上にいくほど少しずつお金が増えていくだけだ。
だからこのヒエラルキーの上に位置する人はお金があまりもらえないことへの不満のハケ口としてものすごくエラそうにしている。
逆に大きくお金を稼ぎたいと思えば、ヒエラルキー的には下の方に位置する中小企業経営者になって自分の給料を自分で決めるか、もしくはこの枠組みに入らない立場で仕事をするしかない。
このコラムで登場するお金持ちの多くが、中小企業の経営者かフリーな立場の人だ。
まれに中小企業から大企業に発展できる企業があり、そのような企業のオーナー社長だけが、大企業経営者の権力とお金の両方を手にすることになる(ユニクロの柳井社長や楽天の三木谷社長など。ただしホリエモンのように嫌われると逮捕されてしまう)。
日本は世界でもっとも成功した社会主義国といわれている。このようなガチガチのヒエラルキーが存在することを良いとするか悪いとするかは人それぞれだろうが、現実問題としてこの枠組みが存在している。
組織の歯車になってお金を捨てれば社会的な地位が得られる。逆に社会的地位や安定性を犠牲にすれば大きなお金を得るチャンスがある。だがひとたび失敗すれば悲惨だ。アメリカのように何度でもチャンスがめぐって来るような社会風土ではない。どちらにするかは自分次第である。
【参考記事】
「そもそもお金持ちってどんな人?」
【関連サイト】
「なぜあなたは出世できないのか?」
「投資で成功するために絶対知っておくべきこと」
「起業・独立で成功するために知っておくべきこと」
「放射能から身を守る食品サイト」
「記事にできないホンネを集めた脱力系裏ニュースサイト」
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