お金から自由な人と不自由な人
前回は資産家と高級取りの違いについて考えてみた。同じ「お金持ち」でも資産家の人と高給取りの人はまるでライフスタイルが異なる。
同様に、同じお金持ちでも、まったく種類の異なる人種が存在している。それは「お金から自由」なお金持ちと「不自由な」お金持ちである。
プログラマーS氏の自由な生活
プログラマーのS氏は、1年のうち半年くらいしか働かない。
S氏はプログラマーだが、いわゆるシステム会社に勤めるサラリーマンではない。大学の工学部を出てシステム会社の技術者として働いていたが、独立してプロジェクト単位で請け負うフリーのプログラマーになった。S氏が得意とするのは普通のプログラムではなく、通信プロトコルというちょっと特殊な分野のプログラミングである。
この分野の人材は絶対数が少ないことから、独立してからもかなりの単価で仕事の依頼が来る。Sさんは奥さんもプログラマーなので、夫婦でプロジェクトを請け負って稼いでいるのだ。
S氏の両親は亡くなっていて、親から相続した郊外の一戸建てに住んでいる。子供はいないので夫婦の稼ぎは全部貯金することができる。おまけに、10年ほど株式投資を続けており、これもそこそこうまくっている。
S氏夫婦の資産は家をあわせると1億円弱である。1億円の運用で得られる利子や配当収入と比較的単価の高いプログラマーの仕事をあわせると、家賃を払わなくもよいS氏夫婦は十分に暮らしていけるのだ。
S氏夫婦は資産1億円というそれほど大きな資産を持っているわけではない。しかし、S氏夫婦は自分の労働だけに頼らなくても十分に豊かに生きていける。S氏夫妻両方の仕事と、持っている資産のすべてを同時に失う可能性はほぼゼロだからだ。S氏夫婦はお金から自由になっている「お金持ち」といえよう。
実業家T氏のモーレツ人生
一方、実業家のT氏はS氏とは正反対の人生である。
T氏は営業マンとして不動産会社に15年勤めたあと、自身の不動産会社を設立して社長になった。幸いにも会社は順調に業績を伸ばし、現在のS氏の年収は3000万円である。T氏は夜な夜なキャバクラに繰り出し、ベンツを乗り回している。自宅も立派だ。
だがそのT氏にも弱点がある。T氏の会社はT氏がいないと回らないことである。
企業家精神に溢れてパワフルなT氏とその部下ではやはり器が違う。T氏の右腕になる人はなかなか育たない。
T氏は常々「人に任せたい」と言っているが、社員の多くは小さな案件までT氏に相談するので、T氏は一日中働きっぱなしである(たぶんT氏はホンネでは部下に育って欲しいとは思っていないかもしれない)。
しかも、日本の金融制度の悪いところもでもあるが、日本の中小企業の多くは、経営者が個人保証を入れないと銀行からお金を貸りることができない。T氏の会社は不動産業であり、オフィスビルを何棟も所有している。だが、その購入資金のほとんどは銀行からの借り入れであり、T氏がすべて個人保証を入れている。もし何らかの理由で業績が急に悪くなることがあったら、T氏は自己破産するしか手がなくなるだろう。
T氏の資産は十数億円に達する正真正銘のお金持ちだが、借金もほぼ同額あり、T氏が働きつづけないとこの環境は維持できない。S氏が自由なお金持ちなのに対して、T氏はよりリッチではあるが、お金から不自由なお金持ちといえる。
自由がない貧乏人だけは避けなくてはならない
どちらがよいとは一概には言えない。
おそらくT氏は「はやく楽になりたい」との言葉とは裏腹に、実際には今のような環境でがむしゃらに働くことを望んでいるだろう。また多くのお金持ちが、T氏のようながむしゃらな環境を続けなければならないというのも事実だ。
Tはそれでもたいへんなお金持ちなので、人生は充実しているだろうし、いい思いもたくさんしているだろう。
最悪なのは「お金がないのに、お金と仕事からも自由になれない人」である。これは、会社の歯車になってつらい思いをしている多くのサラリーマンが該当するかもしれない。かつて「金持ち父さん、貧乏父さん」で有名になったロバート・キヨサキ氏がいうところの貧乏父さんである。
一方で、スローライフを実現できた人やノマド的な生活を送っている若い人は、「お金はないが自由」な人生を送っているかもしれない。だが、肝心のお金がないとイザというときには大ピンチなのも事実だ。
お金持ちかどうかに関わらず、お金から自由でいられるのかは重要な問題である。お金からどのくらい自由になりたいのかは常に自分に問いかけるべきテーマといえよう。
【関連サイト】
「なぜあなたは出世できないのか?」
「投資で成功するために絶対知っておくべきこと」
「起業・独立で成功するために知っておくべきこと」
「放射能から身を守る食品サイト」
「記事にできないホンネを集めた脱力系裏ニュースサイト」
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